杜の樹神(もりのこだま)3月号

 日本の人々が 過去の伝統と現在の革新の間の 得難い均衡をいつまでも 保ち続けられるよう 願わずにはいられません それは日本人自身の ためだけにではありません 人類のすべてが、 学ぶに値する一例を そこにみいだすからです        ……………レヴィストロース


 今から半世紀ほど前、日本や欧米先進国では、学生運動が盛んでした。古い伝統的な価値観に対する若者の抵抗反乱です。  日本の学生は、私もそうでしたが、伝統的価値観やマルクス主義価値観のはざまにあって解決を見いだせずに暗中模索を続けていました。  ちょうどこのころです。構造主義という言葉が我々の目の前に救い主のように現れました。  この構造主義という文化の観察方法の中心にいたのが人類学者レヴィーストロースです。 


 彼は、日本を訪れて、大都会だけでなく、地方の小さな村落にも足を運び、その社会の隅々まで詳細に観察して廻りました。  近代化が進むにしたがって、、科学技術の進化と共に、諸々の精神文化生活が忘れ去られてゆく、欧米の現状を憂いていたこの学者は冒頭の文章を世に著しました。


  先進技術に伝統のワザを巧みに取り入れより質の高いものを創り上げる力を持ち、伝統的な精神文化がナマのかたちで生き生きしている日本の社会に、驚きと羨望を、そして憧憬の念さえ感じていたかと思われます。 明治二十九年、愛知県に生まれ、国民教育者の師父と謳われた森信三は、九十七歳で亡くなる前に、日本の将来を次のように言いました。 「二千十年から二千十五年まではどん底だが、二千二十五年に日本は立ち上がる兆しが見えるであろう。二千五十年になったら列国は、日本の底力を認めざるを得ないであろう。 日本には世界のリーダーたるべき資格がある。現状はおぼつかないが、いずれその逆境を乗り越えて立ち上がれるであろう」と。

 私もそう確信しています。百歳まで生き抜いてそれを見届けたいと思います。   


洞雲山 江岩寺(臨済宗妙心寺派)

江岩寺は、愛知県小牧市北東部丘陵地帯の大山区に位置しており、緑豊かな自然環境のなか小牧市最高峰、標高約300mの天川山を背景にして静かに佇む山寺です。 山の中腹に大山寺塔跡、兒神社(ちごじんじゃ)不動堂、 そしていくつかの古墳、麓に江岩寺と薬師堂があり、 これらが連なる開析谷一帯は国の史蹟に指定されています。