山川草木悉皆有仏性

 「人間だけが特別の存在ではない。草や木も生きとし生けるものはすべて平等で、仏性があり、成仏している」

 この教えは、日本天台宗の根本教義のひとつで平等思想です。

 しかしこの、山や森に仏が宿るという素朴な多神教的考え方は、遥か昔の縄文時代の宗教観でした。森とともに生きていた縄文人にとっては、人知の及ばない自然こそが神であり、森の中に多くの神々をうみだし、大切に崇めました。

 仏教は天平・飛鳥時代に半島経由で、高度な文明と共に日本に入ってきました。権力や人が集まる平地に都ができ、そこに大寺院が次々と建立されました。このときの仏教は、かぎられた人間や経典・教義が中心で、鎮護国家の宗教でした。


 その後、大陸での留学から帰還した最澄と空海によって仏教改革が行われ、ここに日本仏教が誕生しました。最澄は比叡山で日本天台宗を、空海は高野山で真言宗をひらきました。

 双方ともに、巷の喧騒を避け、自然の中に基盤を置き、八百万の神々を尊崇する神道を、敵視することなく平和的に融合させました。この神仏習合の考え方は、深く広く日本人の宗教観に根付きました。

 空海は「森は天上の世界よりも美しい」と言い切っています。森は、いま目の前にある現実です。生きとし生けるものの命の輝きです。そして天上の世界はというと人間が考えだした創造の世界に過ぎません。

洞雲山 江岩寺(臨済宗妙心寺派)

江岩寺は、愛知県小牧市北東部丘陵地帯の大山区に位置しており、緑豊かな自然環境のなか小牧市最高峰、標高約300mの天川山を背景にして静かに佇む山寺です。 山の中腹に大山寺塔跡、兒神社(ちごじんじゃ)不動堂、 そしていくつかの古墳、麓に江岩寺と薬師堂があり、 これらが連なる開析谷一帯は国の史蹟に指定されています。